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沖縄発のAI人材育成が、企業のDX推進力を育てる
~ 琉球大学 山田准教授 × MiDATA 執行役員 川畑さん を取材しました ~

概要
沖縄県内で、データサイエンスの知識や技術を社会や企業の課題解決につなげられる人材を、どのように育成していくのか。
琉球大学では、データサイエンスの講義や演習で身につけた知識・技術を、さまざまな分野の「問題解決」や「価値創造」につなげる人材の育成に取り組んでいます。その実践的な学びの一つが、企業などが抱える実際の課題を題材とする課題解決型学習(Project-Based Learning:PBL)です。
MiDATAは、こうした実践教育の場に企業側から参画し、実際のビジネス課題を題材とした集中講義を担当しています。学生たちは、課題に向き合い、考え、試行錯誤する経験を重ねながら、データ分析やAIを社会で活かすための力を身につけています。
本記事では、山田教授と川畑氏に、両者の連携が始まった背景や、PBLを通じた人材育成への思い、地域の未来に向けた展望について伺いました。
① 出会いをきっかけに始まった琉球大学とMiDATAの連携
――「なぜ、琉球大学とMiDATAの協働は始まったのでしょうか?」
きっかけは、川畑氏が沖縄オフィスの開設に向けて参加した企業誘致イベントでの偶然の出会いでした。
琉球大学では、データサイエンスの知識や技術を社会の問題解決や価値創造につなげられる人材の育成を進めていました。一方、MiDATAも沖縄に根ざし、AI・データ分析を通じて地域産業に貢献したいという思いを持っていました。
こうした双方の方向性が重なり、琉球大学が進める実践的なデータサイエンス教育に、MiDATAが企業側の立場から協力する連携が始まりました。
MiDATAは、実際のビジネス課題や現場で培った知見を教育の場に持ち込み、学生が企業課題に向き合うPBL型の集中講義に協力しています。

② 教室の外へ。企業課題で学ぶ課題解決型学習(PBL)とは?
――「大学での学びを、どのように実務へつなげているのでしょうか?」
山田教授が重視しているのは、知識の習得にとどまらない教育です。
統計やプログラミングの基礎を学ぶだけでなく、「現場で何を見て、どのような問いを立て、どう解決策を導くか」を実践的に学ぶ機会が必要だと考えています。
琉球大学では、こうした実践的な学びの一環として、企業などが抱える実際の課題を題材とした課題解決型学習(Project-Based Learning:PBL)を取り入れています。MiDATAもその実践教育に参画し、春休みに実施される集中講義を担当しています。
学生たちは、正解が一つではない課題に向き合い、課題を整理し、必要なデータや分析方法を考え、試行錯誤しながら解決策を導く一連のプロセスを経験します。データ分析やAI活用を単なる知識として学ぶのではなく、社会や企業が抱える課題の解決にどう活かすかを、実践を通して学んでいるのです。
③ 身近なサービスを題材に、データサイエンスを「自分ごと」にする
――「学生がAIやデータサイエンスを『身近なもの』として捉えられるよう、どのような工夫をしていますか?」
データサイエンスを身近に感じてもらうための工夫の一つが、学生にもイメージしやすいサービスを題材にすることです。MiDATAが担当する講義では、その一例としてマッチングアプリを取り上げ、レコメンドやデータ分析など、サービスの仕組みを支えるデータサイエンスの考え方を学びます。
身近なサービスがデータによってどのように支えられているのかを考えることで、学生たちは、授業で学ぶ統計やデータ分析が実社会とどのようにつながっているのかを具体的に捉えていきます。
こうした実例を入り口にすることで、データサイエンスを単なる知識としてではなく、社会や企業のさまざまな課題を考えるための身近な手段として捉えるきっかけにもなっています。
④ 実践課題で学ぶ、画像解析や予測分析
――「講義では、AI・データ分析に関するどのようなテーマに取り組んでいるのでしょうか?」
集中講義では、毎年テーマを変えながら、実際のビジネス課題に直結する内容に取り組んでいます。その一例が、マッチングアプリの登録写真に重ねられた「顔の絵文字スタンプ」を検出し、切り分けるアルゴリズムの構築です。顔の絵文字スタンプの位置やサイズ、種類の違いに加え、画像の一部が欠けているケースなど、多様な条件への対応が求められます。
学生たちは、単に「検出できるか」だけを目指すのではなく、誤検知が発生した際の原因分析や、個人情報やプライバシーに配慮したデータの取り扱いなど、実際の運用を想定した設計プロセスについても学びます。
また、ECサイトにおけるユーザーの離脱予測など、実務を想定したデータ分析課題にも挑戦しています。
こうしたPBLを通じて、学生たちは機械学習の理論だけでなく、結果を検証し、試行錯誤しながら、データ分析やAIを実際の課題解決に活かすための実務的な視点を身につけています。
⑤「正解のない課題」に挑むことで育まれる実践力
――「『正解のない課題』に向き合う経験は、学生にどのような学びをもたらすのでしょうか?」
こうした課題解決型学習(PBL)を通じて学生が身につけるのは、模範解答を覚える力ではありません。あらかじめ用意された手順をなぞるだけでは、実際の現場で起きる例外や前提条件の変化に対応できないからです。授業では、仮説を立て、前提や条件を見直し、データをさまざまな角度から捉えながら、より良い解決策を模索していきます。
講義の最終発表会では、MiDATAの役員も参加し、学生たちがオンラインでプレゼンテーションを行います。実務家や大学教員からフィードバックを受け、自分たちの分析や提案を異なる視点から見直す機会も設けられています。
こうした経験は、学んだ知識を実際の課題解決に活かす力へと高める重要な機会です。「答えが一つではない課題」に向き合うことは、自ら考え、試行錯誤しながら価値を生み出す力を育むことにもつながっています。
⑥ 技術だけでは解けない。現場理解から始まるデータ活用
――「実際の企業課題を教育に取り入れることで、学生はどのような実践力を身につけているのでしょうか?」
MiDATAが担当する講義の特徴の一つは、実際の企業課題やデータ活用の事例を題材としていることです。学生たちは、AIやデータ分析の理論や手法を学ぶだけでなく、企業がどのような業務を行い、その中にどのような課題があるのかを、具体的なケースを通じて考えます。
現場では、データを分析する前段階として、業務内容を理解し、課題を整理し、関係者の声を丁寧に拾い上げるプロセスが欠かせません。授業では、こうした実務に近い視点にも触れながら、「現場の何を改善したいのか」「そのためにはどのようなデータが必要なのか」などを考え、AIやデータ分析を課題解決につなげるための考え方を実践的に学んでいます。
また、実社会に近いテーマに取り組むことで、学生たちは「AIをどう活用すれば、社会や企業の役に立てるのか」を具体的に考える機会を得ています。大学教育の段階からこうした実務に近い経験を積むことが、将来、データ分析やAIを活用して課題解決に取り組む際の実践力につながることが期待されます。
⑦ 沖縄で育つデータサイエンス人材が、地域の未来を支える
――「この取り組みの先に、どのような未来を描いていますか?」
山田教授は、学生一人ひとりの強みを活かしながら、データサイエンスの知識や経験を社会の中で活かし、沖縄や日本の経済に貢献できる人材が育ってほしいと語ります。一方、川畑氏は、県内企業の「稼ぐ力」をAI・データ分析で支え、沖縄出身のAI人材が県内で活躍できる受け皿を広げたいと話します。
教育と実社会、大学と企業。その接点にあるのが、琉球大学とMiDATAの協働です。両者が目指しているのは、学生がデータサイエンスやAIを実際の課題解決に活かす経験を積み、その力を社会の中で発揮できる環境を育てていくことです。
こうした学びを経験した人材が、それぞれの職場や地域でデータを活用し、身近な課題の解決に取り組んでいく。その積み重ねが、地域企業の成長や新たな挑戦を支える力につながっていくことが期待されます。
琉球大学とMiDATAの協働は、沖縄で学んだ人材が地域や社会の課題解決に力を発揮できる、そんな未来に向けた取り組みの一つです。
